top of page

早期帰任・離職・稼働低下を防ぐ『3つの支援フレーム』—制度と現場のすき間を埋める家族ごと支援(第2回)

  • 執筆者の写真: Info- Oden
    Info- Oden
  • 33 分前
  • 読了時間: 8分
ree

制度と現場のすき間を埋めるには、“家族ごと”の支援が欠かせません。駐在・単身赴任の成果を守るには、本人1on1/家族1on1/家族セッションをどう組み合わせ、出発前からいかに設計するかが鍵になります。


本記事(第2回)では、基本フレーム、導入時期・頻度の目安、そして“変化や改善が見え始める初期兆候”について、Oden代表の会川智華のインタビューから紐解きます。


会川智華プロフィール(株式会社Oden 代表/国際コーチング連盟(ICF)認定PCC)


会計士からプロコーチに転身。組織・人材開発のためのコーチング/コンサルティング/研修サービス「T‑Coach」、夫婦・家族など「大切な関係性」に伴走するコーチングサービス「ふたりごと」、プロコーチのブラッシュアップコミュニティ「MIKAN」を展開。ICF認定スクールにてコーチ育成にも取り組む。


※この記事は、全3回の連載記事です。

第2回:早期帰任・離職・稼働低下を防ぐ『3つの支援フレーム』(本記事)

第3回:人事・経営ができる導入設計と評価指標(11月3週目公開予定)





個人×家族×職場をつなぐ『3層フレーム』


─ 今回のプログラムの「基本フレーム」について教えてください。ご本人の1on1/ご家族向けの1on1/家族セッションの棲み分けは、どんな意味やねらいがありますか?


大きく三つあります。


  • 本人1on1 人材開発の文脈で、職場へのスムーズな適応を支援します。新しいチームや役割に向けて、「今、何から取り組むか」を一緒に整えていきます。

  • 家族1on1 ご家族にも個別支援が可能です。仕事のためというより、現地での不安への対処や、暮らしをどう楽しみ適応するかといったお話が中心です。必要に応じて赴任者ご本人が受けることもできます。

  • 家族セッション ご家族全体で受けていただけます。コーチ+お二人(パートナー)でもいいですし、お子さんがお話できる年齢であれば3人、4人での実施も可能です。

いずれも基本オンラインです。各地域にコーチがいるため、時差に配慮した担当体制で、参加しやすい時間帯に実施できます。



─ なるほど、グローバルに対応できるんですね。


はい。Odenのコーチは日本・北米・欧州・アジアなど複数のタイムゾーンに在籍しており、赴任先の時差に合わせて適任コーチを手配できます。駐在経験のあるコーチや、帯同・単身赴任の家族としての海外生活経験を持つコーチも複数在籍しています。


言語は日本語を基軸に、必要に応じて日英バイリンガルでの実施も可能です。異文化適応や学齢期のお子さまの学校選び、現地コミュニティの作り方など、実体験に根ざした知見で伴走できるのが強みです。



─ 実務の進め方や配慮で大事にしている点はありますか?


ご本人やご家族の安心のため、守秘義務は厳守します。個別の相談内容が会社に共有されることはありません。


人事や他部署との連携が必要と判断される場合に限り、目的と共有範囲を明示し、ご本人・ご家族の同意を得た上で最小限の情報に限定して連携します。


家族としての大変さを口にすることで、「それが会社に伝わってパートナーのキャリアに影響するのでは…」とご心配される方もいらっしゃいますが、運用方針により、その懸念に配慮しています。




“使われない制度”を動かす早期の伴走設計


─ このサービスを導入する第一歩として、人事・経営側にお願いしたいことや必要な準備はありますか?


まず、対象は「駐在・単身赴任される方」と、そのご家族・周囲の方まで幅広く設定していただきたいということです。任意でも良いのですが、実際は自分から「大変です、相談したいです」と自己申告するのは難しいという声を多く伺います。そのため、赴任される方は原則対象として“必須”にするなどの設計をおすすめしています。



現場でよく伺う課題


  • 制度はあるのに使われない(面談OKと言われても、着任直後に『大変です』と言いづらい)

  • 早期帰任やメンタル不調が出て初めて顕在化する

  • どんな支援が実効的か/どのタイミングで打つべきかの見立てが難しい

  • “言い出しづらさ”という見えない壁が、本人・家族・職場のそれぞれに存在する


だからこそ、赴任が“決まった時点”から専門家による第三者が伴走できる設計が有効です。早期に安心して言葉にできる場を用意することで、本人はプレッシャーの扱い方を整えられ、ご家族は納得して進むための合意形成に取りかかれます。



─ 期間や頻度の目安はありますか?


期間の目安は、最短でも4か月・4回以上ご一緒できると、価値を実感していただきやすいと考えています。ケースに応じて6か月、9か月、1年、あるいは駐在期間を通期で伴走する形も可能です。



─ ペースは一律ですか?最適な頻度があれば知りたいです。


環境変化が大きい時期ほど、間隔を空けすぎないことが大切です。最初は2〜3週間に1回を基本にします。具体的には、


  • 赴任が決まったタイミングで1回

  • 出発直前に1回

  • 着任後しばらくは2〜3週間ごとに継続

  • 現地に慣れてきたら、月1回〜1.5か月に1回へ緩和


という流れが理想的です。



— なるほど。これがあるのとないのとでは、ご本人もご家族も気持ちや生活の安定感が大きく違いそうですね。




変化や改善が見え始めるサイン


変化や改善が見え始めるサインの説明をする会川

─ 実際にコーチングを開始して、どんなサインが出てきたら変化や改善が見え始めたと言えますか?始めどきも含めて知りたいです。


個人でもご家族でも少しずつ違いますが、次のような変化が表れたら変化や改善が見え始めているサインだと思っています。


ご本人(赴任者)側のサイン


  • 漠然とした不安が言語化される 不安を言語化できない段階から、「新しい言語でどう伝わっているかが心配」など、具体的に言えるようになる。

  • 自分の頑張りを認められる 「ここまでやれている自分もいる」と現状の良い面も受け止めることができた上で、「来週これに挑戦してみよう」といった次の一歩を自分で決められるようになる。

  • プレッシャーと健全な距離を取れるようになる 「仕事がすべてではないけれど頑張る」というように、プレッシャーの程度を調整することで、実力を発揮しやすくなる。

  • 自分らしさを発揮できるようになる 自分の価値観や強みが日々の選択や仕事に反映され、役割期待に振り回されず、無理のないパフォーマンスを保てるようになる。



ご家族(帯同・留守)側のサイン


  • 小さな願いを安心して伝えられる 「本当はここをもう少しケアしてほしい」 とその場と関係性を信頼して口にできる

  • 役割やバランスの変化が見える 新しい土地・生活の中で、役割や負担の変化が少しずつ見え始め、役割分担やルールが具体的に決まり、家族で共有できている。これは“ひと段落”のサイン



ー少しでも本音が言えるようになると、その後の動き方が変わってきそうですね。




効果の目安と「2度の変化」


─ 実際にコーチングを受けた方の変化は、だいたいどのぐらいの期間で現れてくるものでしょうか?また、変わらないケースはありますか?


本当に人それぞれ・家族それぞれですが、職場環境や文化のギャップの大きさにも左右されます。あえて区切るなら3か月〜半年くらいを目安にするのが良いと考えています。

変わらないケースは、あまり見聞きすることがありません。赴任者の方は、赴任先で果たしたい役割や達成したい目標をお持ちなので、真剣に向き合うほど何かしらの気づきや行動変化が生まれます。ご家族は要素が多くて複雑ですが、やはり真剣に向き合っていただく中で何らかの気づきや変化が生まれるケースが多いです。


余談ですが、私の好きな言葉で、「2度の変化」という言葉があります。これはチームコーチングの場面で良く使われている、ほんのわずかな変化を指す言葉です。360度のうちのたった2度。そんな小さな違いでも、今ここで舵を切れば、この先の長い年月を進むほどその変化の影響は大きくなる。


 たとえば——


  • 「そう思っていたんだね」と認識の違いを受け止めてもらえた

  • 「この価値観を大事にしよう」と自分なりの小さなお守りが一つ持てた


こうした小さな前進でも、時間の経過とともに大きな違いを生み出します。逆に、日常の小さな不満はじわじわと積み重なっていってしまう。小さなプラスを積み重ねることには、想像以上の価値があると感じています。



─ 「小さな前進=『2度の変化』」を積み重ねることが、のちの大きな違いにつながっていくのですね。




まとめ


駐在・単身赴任の家族ごと支援は、個人×家族×職場の3層をつなぐ伴走です。出発前からの設計で、本人1on1/家族1on1/家族セッションを状況に応じて組み合わせ、2〜3週間→月1のリズムで継続することにより、不安の言語化や次の一歩の明確化、そして役割分担の合意などの変化や前進のサインが現れてきます。


さらに、時差に配慮した担当体制(時差に合わせた適任コーチの手配)駐在・帯同経験を持つコーチの起用、そして守秘義務の徹底により、早期帰任・離職・稼働低下といった見えないコストの抑制につながります。


第3回では、人事・経営の視点から、導入設計の原則と効果の捉え方(定量×定性×経時)、始めどきと見送りの線引き、そして実装ロードマップ(試行導入の型)をを掘り下げていきます。







執筆/WRITING Oden編集部

株式会社Odenのロゴ

Oden編集部は、組織コーチング・パートナーシップコーチング・コーチのスキルとあり方を学ぶコミュニティ(MIKAN)での実践と知見をもとに、現場で役立つヒントや最新トレンド、事例をお届けします。


bottom of page